食塩について考える

2013.05.24

木村 修一 

東北大学農学部名誉教授(栄養学)
昭和女子大学名誉教授
(独)理化学研究所客員主管研究員
加齢・栄養研究所所長
農学博士

健康への関心が高まり、食物がそれに大きく関わっている事が明らかになるにつれ

て、”何をどのように食べるか”ということが重要な課題になってきています。

こうした背景の中で、”これさえ食べていれば、だれでも健康で長生きできる”といっ

た信仰に近いような、いわゆるミラクル(奇跡の)食品や飲料が、現れては一世を風靡

し、また消えるといった現象がしばしば見られます。こうした食物に免罪符的な期待

をする一方で、食品中に含まれるある一つの成分に、まるで毒物に対するような、恐

れを抱いている事が見られます。”これさえ食べなければ、健康が確保できる”と信じ

ているようにである。卵に含まれるコレステロールしかりです。このことは、食塩に

ついてもいえよう。食塩の入っている味噌汁も、健康の敵になってしまうことになり

ます。

しかし、これらは”どの程度食べるか”という量にもよるし、”どのような食物と一緒

に食べるのか”といった他の食物の栄養成分によっても、またこれを摂取する人が”ど

のような年齢で、どのような生活をしているのか”、”どのような遺伝的要素を持って

いるのか”といったことでも、その生理的効果は多いに異なるはずです。

高血圧・脳卒中が、我が国における死因のトップにあり、この病気を防ぐために、

食塩の摂取を減らそうというさまざまの分野からの呼びかけと運動が起こり、かなり

の効果を上げつつあることは事実である。問題は、ただやみくもに食塩を悪者にする

あまり、これを含む食品すべて悪であり、食塩を全く使用しない食事が善であり理想

である、という短絡した考え方や、それを基点とする強引な運動方法にあります。

最近の調査の中で、機能性食品を摂っている人は意外にも栄養パランスの悪い人が

多いというのがあるという。これを摂っているから[安心]する人です。

日本人は、ともすれば極端に走りやすい、あるいは、熱しやすくて冷めやすい、い

われてきた。この減塩運動も、ともすると、われわれの摂食パターンを混乱させ、か

えって栄養失調を助長し、結果的に運動そのものがマイナスになるような事態をもた

らすことも心配されます。

次回からは、塩の生体内での機能について、もう少しお話したいと思います。