塩・しお・シオ・・・この不思議な成分・第一回

2010.01.05

矢澤一良(農学博士、専門は予防医学・ヘルスフード科学)
湘南予防医科学研究所主宰
東京海洋大学へルスフード科学プロジェクト 特任教授
http://www2.kaiyodai.ac.jp/~yazawa/

「塩」に関するお話しは視点によりとても沢山の情報がある。

このコーナーでは、「塩と健康」に関わるお話しにフォーカスしてみたい。

塩は味との関わりが深い事から、先ず味、特に美味しさとは何かを考えてみる事にする。

「美味しさ」があって「食の5しみ」があることはまともなヒトであれば異論を唱えることはあるまい。 ヒトが五感をもっている動物であること、そして美味し
く感ずるもの(食品・栄養素)は、原則的には身体が要求しているもの(生物としての本能)とほぼ同等と考えられる。 身体中の水分が不足して危険であることを察知した脳は、のどの渇きを感じさせ、水を探し、水分補給をさせる。 そこでは、ビールもうまいが、単なる水でも実にうまく感ずる。食事であればなおさらの事である。空腹であれば何でも美味し8F食べられるものである。 ところが飽食の時代は、身体の奥底から出てくる本当に必要な栄養素とは異なる嗜好品偏重、すりこみの味覚、習慣性などをもたらし、我々の食生活は益々健康と遠ざかってしまった。 身体が何を欲しがっているか、自分の体内から感じとる感性を取り戻したいものである。

美味しさの構成を考えてみると、ヒトの五感が重要である。 味覚は舌の味蕾細胞
で脳に伝達されるものであるが、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の5つの基本
味に辛味と渋味を加えたもので成される。 それぞれの細胞表面上のレセプターや細胞の種類やその分布により口腔内で情報を得ている。 これらに、こく・ひろがり・厚みなどの味のプロフェッショナルな部分と、香りなどの嗅覚と、テクスチャー・温度などの触覚を含めて、いわゆる「風味」をかもし出す。 さらに色・光沢・形状などの視覚と咀嚼音などの聴覚とをあわせて総合的に「食味」を構成している。

また、この五感を通して「食味」を感じるのみではなく、気温・湿度、その場の雰囲気などの外部環境、その人の3文化や食習慣などの食環境、体内や口腔内の健康状態など生体内部環境、そして心理状態に反映するストレスや人間関係に至まで、多くの要因が複雑に関わって、ヒトは美味しい、またはおいしくないと感ずるものである。

ここで美味しく感じる場合には健康状態は良くなり、不味く感じる場合にはストレ
スを感じて健康度を低下させる要因となる。 それでは生命現象に最も関連が
深い塩味と健康の関連はどうなのであろうか? 連載形式にて次回よりお話しをさせて頂くこととする。