『たかが塩、されど塩』
瀬川 昌威(せがわ まさたけ)
塩研究家。1941年生まれ。9代続く医者の家に育ち、小児学のパイオニアの瀬川昌耆を曾祖父に持ち、神経内科専門医の「瀬川小児神経学クリニック」の瀬川昌也院長を兄にもつ。
現・株式会社昌平不動産総合研究所 常務取締役。元・昭和電工株式会社ピチット事業部長。
昭和電工では、脱水シート「ピチット」および調湿シート「レッドキーパー」の企画・事業推進に従事。
「ミスター・ピチット」の異名を持つことで知られる。
余分な水気を取り生臭みを取る「ピチット」の開発経験を土台に、本来の塩の価値・役割についての探究を進めている。
「岩塩より海の塩、海の塩の中では、ゲランドの塩、ゲランドの塩の中では、フルール・ド・セル」とは、食にこだわる、フランス人の常識だそうです。
それは何故でしょうか?
昨今、岩塩や海塩のような塩のミネラルが注目されています。けれども、岩塩には、マグネシウムはほとんど含まれていません。
マグネシウムは、酵素を活性化し、肉や魚のタンパク質をアミノ酸に分解します。
パイナップルやダイコン、タマネギにはにはタンパク質分解酵素が含まれていると聞いたことがおありでしょう。そのような消化・分解にかかわる酵素です。
タンパク質が分解されて生成されたアミノ酸、これが、’うま味’の元になります。そして消化しやすく、胃腸に負担をかけません。
だから、マグネシウムがあまり含まれていない岩塩よりも、マグネシウムの多い海の塩、というわけです。
また、海の塩といっても、世界中たくさんの種類がありますが、フランスのゲランド地方の海は、海藻が豊富に採れ、エビや魚介類の宝庫と言われています。その海水で作られた塩のミネラルバランスは、人の身体のミネラルバランスに近いという特徴を持っています。
そのゲランドの塩の中でも、特に、6月から9月までの夏の太陽熱と風の力で、海水が蒸発して、海水の表面に、ポカリポカリと浮かんでくる塩の花と呼ばれるフルール・ド・セルは、世界のトップシェフ達が評価している塩です。
これは、釜炊きなどの高熱を与えずに、結晶したもの。
マグネシウムを始めとする多種のミネラルが、その個々のミネラルの働きを発揮するためには、イオンの状態になっている必要がありますが、低温で結晶したフルール・ド・セルは、素材に溶けやすく、身体にも優しいというわけです。
冒頭の言葉は、フランスの一般家庭に伝わる、母から娘へ受け継がれている主婦の知恵といったものですが、まったく理にかなっていると言えましょう。